2021 全米女子オープン②笹生優花優勝
カリフォルニア州サンフランシスコ近郊、オリンピックゴルフクラブで開催された全米女子オープンの決勝最終日は、レクシー・トンプソン、畑岡奈紗、そして笹生優花選手の優勝争いとなりました!
初日:笹生優花
日本で鮮烈プロデビューを果たしあっという間に2週連続優勝を成し遂げた笹生優花選手。
アメリカで観るのを楽しみにしていましたよ。
コロナによる無観客試合が続いたせいで、笹生選手にとってもプロデビューしてからほぼ初めての有観客試合。なのでワタシが彼女のプレーを見るのもこれが初めて。
全米女子オープン初日は午前スタートで、サンフランシスコ空港からUBERでゴルフ場に駆け付けると、韓国のチョン・インジ、米国のマリナ・アレックスと同組になった彼女のラウンドはもう始まっていました。ベイエリア特有の霧がかかり肌寒いため完全防備の笹生選手。
僕が見ていた前半のラウンドではまだエンジンがかかりきってない感じでしたね。スコアもそんなに良くなかったと思います。
印象的だったのはコミュ力の高さ。日本からやってきていきなり同伴競技者と笑顔で会話している姿なんてこれまでの選手では、というか彼女を除くとどの日本人選手に見られない姿でした。英語が話せる、というアドバンテージ以上に、みんなと楽しくゴルフしたいという意識の表れなのかもしれません。
笹生選手の初日と参加日本人選手の様子を動画にしましたのでよければこちらもご覧ください。
最終日~プレーオフ
全米女子オープン初日を生観戦してから一度飛行機でシアトルにとんぼ返りしました。翌金曜には仕事に戻り、土曜には笹生選手が首位と一打差という報を受け、喜び勇んで日曜にサンフランシスコへ戻ってまいりました。
行きの飛行機の中で笹生選手が優勝するイメージトレーニングをしながら一人にやけておりました。なにせ日本人選手がアメリカのトーナメントで優勝するのを生でみるのがボクの夢であり、それがメジャーの舞台だったりしたらこれはもう涙と鼻血がとめどなく噴き出るのは間違いないわけで。
初日同様、コロナのワクチン接種の有無を聞かれ、モバイルチケットをスキャンしてもらい、肌寒いサンフランシスコのゴルフコースに降り立ちます。
で最終日は、最終組の笹生選手、そしてその前の組の畑岡選手しか眼中にありません。畑岡選手も2,3日目とスコアをじりじり上げてきておりました。でも首位をとるにはスコアが離れすぎているかなー、という状況です。なので可能性が高いのはやはり笹生選手でしょう。
この大会が笹生選手にとっても実質プロとして初の有観客なわけで、当然ワタシも初観戦なわけで、もちろん写真なんて撮ったことがないわけです。
でも優勝しちゃうかもしれないし、優勝したらその後はファン対応どころじゃないだろうし、でも優勝できなかったら写真撮ってもらうのも気が引けるし価値も半減するしなぁ(・・・失礼!)といろいろ考えを巡らせました。
その結果、最終日最終組のラウンド直前に写真をお願いすることにしました。
普段はプレー前に声を掛けるなんてことはないんですけど、前日にプレー前にファン対応していたツイートを見て、ひょっとしてオッケーなんじゃないかと淡い期待をしていたからです。
ってなわけで、練習場へ向かう笹生選手を見つけ、英語でセルフィーをお願いしました。
笹生選手の「しゅあー」の回答を得て撮った一枚がこれ。
もし優勝しちゃったら、全米女子オープン最終日当日ラウンド直前の自撮り写真は家宝モノになるーー!
と期待していましたが、確かに結果的に優勝記念写真となったものの、家族にすらその価値を認めてもらえません。w
で笹生選手は同じ最終組のレクシー・トンプソンとともに練習場でウォーミングアップを開始しました。
笹生選手は入口から最も遠い練習場右隅、レクシーは逆の左隅に陣取ります。
まだ高校生アマチュアで今大会の台風の目となっているメガ・ガーネ、単独首位のレクシー・トンプソン、そして1打差でトップを追う笹生優花選手の最終組がティーオフしました。
しかしこの組のギャラリーは国際色豊かでしたね。言葉も様々で笑っちゃいました。レクシーを応援するアメリカ人の英語、ガーネを追うインド系のなまった英語、笹生選手に注目するフィリピン人のタガログ語、そして日本人の日本語・・・。
そんな多種多様なギャラリーの前で、出だしの1番パー5ロングホールで圧倒的なドライバーショットを放ったレクシーは、見事にツーオンを果たしてイーグル逃がしの楽々バーディー。3日目の勢いそのままに、圧倒的多数のアメリカ人の声援を受け貫禄のスタートです。
逆に笹生選手は続く2番ホールでドライバーショットをミス。僕みたいな素人でもスイング時の異変には気が付きました。インパクトが緩んで芯を外した音がしました。結果として200Yも飛ばずにプッシュアウトして右の深い傾斜へ。
のちのインタビューで「ボールがティーから落ちて見えた」と語っており、止めようとしても止められず中途半端なスイングになったとのこと。当然ボールがティーから落ちそうになってはないので、うわー、全米オープン怖ぇー、って思っちゃいました。
そしてこのリカバリーも中途半端になり、パットも入らずダブルボギー。続くパー3ホールもダボを叩いたため、あっという間に首位レクシー・トンプソンとの差は5打に広がってしまいました。
まじかー、こりゃもうだめかもー、レクシーをちょっとでも慌てさせてほしいなー、って感じでしたこの時点では・・・。
ぽっと出のゴルファーならいざ知らず、なにせ百戦錬磨のレクシー・トンプソンです。現在のムードを見てもスコアを落とすことは考えにくいし、笹生選手が猛烈に追い上げるような勢いもなさそう。
人は多いし、暑くなってきたし、もう帰ろうかな、とマジで思いました。
でもホールが進むにつれ笹生選手のプレーも安定してきました。 スコアが頻繁に上下する畑岡さんのプレーもひそかに気になっています。
そしてそのレクシー・トンプソンのプレーがおかしくなってきたのは後半に入ってからです。
11番ホールパー4ミドルホールでティーショットを引っ掛けたラフから出すのがやっと。アプローチショットはまるでアベレージゴルファーのごとくの大ダフリでピンに寄らず入らずのダブルボギー。
しかしここで笹生選手も3パットのボギーを叩いて、スコアを一気に縮めるチャンスを逃してしまいやっぱり駄目かー、とまだ思っていました。しかし、年齢が近くジュニア時代から交流のあるメガ・ガーネとヤングな会話を楽しんでいる様子にプレッシャーは微塵も感じられませんでした。
スマホでリーダーボードを逐一確認していたのですが、気が付けば前の組をプレー中の畑岡奈紗選手がスコアを伸ばして単独首位のレクシー・トンプソンを捕らえそうないですか!
なので急いで次のホールに移動して畑岡組に追いつきます。
するとその直後、16番パー5ロングホールを見事に攻略してバーディー! 首位レクシーと1打差に迫ります。
続く17番ロングもバーディーを狙いましたが、3打目がグリーン手前の深いラフに入り、アプローチも寄せられず、返しのパットを根性で入れてパーセーブがやっとの状況。でも入れた瞬間ガッツポーズが出たので選手は落ち込んでいない模様。
この時点で畑岡選手がトップと1打差、笹生選手が2打差。
最終18番パー4ミドルホールに挑む畑岡選手。
絶対にバーディーの欲しいところですが、無情にもパットはカップ左側をかすめ、スコアを伸ばせずトップに追いつけずホールアウト。
しかーし。
レクシー・トンプソンがなんと17番、18番連続ボギーで3アンダーというスコアでホールアウト。信じられないことに後半だけで5つもスコアを落としてしまいました。最終ホールでパーセーブを逃して首位陥落した時のアメリカ人の落胆ぶりといったら、ちょっと気の毒になるぐらいでした。
逆に16番と17番でバーディーを取った笹生選手そして畑岡選手がともに4アンダーの首位タイで72ホールのストロークプレーを終了。
というわけで、全米女子オープンは、笹生、畑岡の日本人選手同士のプレーオフで勝者を決することになりました!(正確には日本との二重国籍を持つ笹生さんはフィリピン人選手として大会登録)
もうボクの想像と期待の斜め上を行く展開。
自分が生観戦している米メジャートーナメント最終日のプレーオフを、日本人2人が争うなんて・・・。
日本のメディア関係者の方々も18番グリーン周辺におられましたが、一様に状況を掴めていない様子でした。じーっと落ち着こうとしている方、慌てて電話している方など、対応は様々でしたが、思わず「これ、夢じゃないですよねー!」と声を掛けたくなりました。
プレーオフの結果は、みなさんご存じのように笹生優花選手が勝利しました。
ボクももちろんプレーオフ3ホールを選手について回りました。9番ホールからプレーオフ開始とのアナウンスを聞き、実は女子オープンのプレーオフの進め方を知らなかったので、同じく選手に並走していた係員に質問してようやく理解できました。「全米オープンのプレーオフって翌月曜日に18ホールやるんじゃなかったっけ?」という記憶もあり、実際に最近までそれは正しかったようなのですが、規定が改められ、2ホール合計スコアを採用し、同点の場合にはサドンデスに入る、とのことでした。そしてそのサドンデス1ホール目で見事にバーディパットをねじ込んだ笹生選手が優勝しました。
でも正直なところ畑岡選手に勝たせたかったかなぁー。プレーオフで負けた2018年の全米女子プロも現場で観ていて悔しい思いをしていますし、ルーキーイヤーからアメリカで見させてもらっているので、なんとなく畑岡選手を応援しちゃってましたね。
カートに乗ってクラブハウスに戻る際にギャラリーから掛けられた「I’m proud of you!!」という言葉がまだ耳に残っています。優勝したらおそらくシャンパンファイトに加わる予定だった上原彩子選手の背中も寂しそうだったなぁ。
一方の笹生選手。
会場周辺にコミュニティーがあるフィリピン人ギャラリー達の声援も心強かったと思います。畑岡選手も加わった表彰式も彼らが盛り上げてくれましたねー。笹生選手のスピーチとインタビューも立派でした!
とにかくこれで全米女子オープン日本人優勝者と大会最終日に撮った自撮り写真が手元に残りましたw
家宝にはなりませんが、ボクの思い出のひとつとして大事にしたいと思います。なにせ日本人の優勝をこの目で見るという夢が叶ったのですから。
最終日とプレーオフの様子は動画にもしてありますので、よかったらご覧ください。