LPGA日本人13選手はどの大会に出られるのか(後編)
LPGAの出場権とリシャッフルについて深掘りした前編に引き続き、この後編では日本人ツアー選手は今後どの試合に出られるのか推察していきます。
3/24現在 25年出場可否状況
これが25年1月17日発行のプライオリティリストから、出場優先順位カテゴリと出場優先順位を抜粋した表です。先ほどお見せいたしました。

その後3月に竹田麗央選手がメンバーとして優勝し、ソフィアポポフのカテゴリ間違いが発覚し、他の選手の産休適用期間が終了したことなどから、プライオリティリストと優先順位が3月10日に更新されました。

3月10日版では結果としてカテゴリ3以下の選手の優先順位が3つ上がりましたね。
まぁ、いずれにせよ、ここまでの話からすると、予選会を経由したカテゴリ15の選手たちもリシャッフル気にしなくていいんだよね、ってことで。
フォード選手権開始前の現在ですが、今後のLPGAトーナメント一覧に、各試合の省略名、開催日、出場人数をむかって左側の列にリストしました。◯印は前述したように、出場優先順位リストで主に出場枠が決まる大会で、第一回リシャッフル後のリビエラマヤ以降はリシャッフルの影響下にある大会とも言えます。
(註:ブラックデザート終了(5月4日)は、みずほのエントリー締め切り(5月2日)よりも後のため、リシャッフルはみずほの出場優先順位に影響しない)
第二回は全英女子オープン前後かと思われます。

選手名の下には、出場優先順位、最新CMEランク、そして最新世界ランクを追加しました。すべて3月24日時点です。
そして緑のセルは出場可能、黄色のセルは出場未確定を意味しています。
一点だけ気をつけて欲しいのは、この緑のセルは、出場権が降りてくる、つまりあくまでもエントリーすれば高確率で出場できる、という意味です。「エントリー済み」でその選手の出場が確定したわけではありません。
出場権があっても、前述したように、エントリーせず何らかの理由で欠場することがあります。
例えば上から2番目のマッチプレー。今季優勝者枠で出場が可能な竹田麗央選手は、すでに大会の欠場を決めています。ですが出場権は降りてきたということで、緑のセルで塗りつぶしています。
それで、各選手のCMEランクと世界ランクに戻って特筆すべき点を3つ。
- 山下、吉田、馬場選手がそれなりのCMEポイントを稼いだということ。特に相対的に世界ランクが下位の吉田選手と馬場選手がCMEポイントを40ポイント以上稼いだことは大きいですね。これにより吉田選手も馬場選手もメジャー初戦のシェブロン選手権の出場を最新CMEランクベースで確実なものとしました。あとでおまけとして詳しい表をお見せしますが、昨年のシェブロン出場に必要だったのはCME20ポイント。CMEランク105位前後ほどで出場でき、吉田選手も馬場選手もすでにそれをクリアしました。
- 岩井姉妹がまだCMEポイント加算がないこと。明愛選手が大健闘したホンダLPGAタイランドは推薦出場のためCMEポイント獲得できず、その後のブルーベイLPGAには、出場資格あったのにも関わらずツインズ2人揃ってエントリーミスによりポイントを稼ぐ機会を1試合失いました。
- 西村選手と勝選手のシーズン中盤に黄色セルが目立つこと。特にここまで下位でのゲームが続く西村選手は、CMEポイントが少ないので、目指す全米女子オープン以降のメジャー出場に向けてCMEランク、世界ランクを上げていきたいところです。
では大会ごとに見てみましょうか。
- 上から5試合は、マッチプレーを除けば13人全員出場できる見込み。
- 2番目のTモバイルマッチプレーは64名という限られた出場選手枠なので、多くの選手が難しそう
- ブラックデザートはユタ州の新規大会。メジャー翌週なのでスキップする選手が多くなると予想し、フォードに続いて13名全員に出場権が降りてくると予想しています。
- 第一回リシャッフル後の◯印の5試合は全員に出場権が降りてくると予想していますが、例外はみずほアメリカズオープン。144人フルフィールドにジュニアのアマチュア選手が24名含まれるため、プロの出場枠は120名に限られます。そうなると過去2年の実績から、現状では岩井選手以下は厳しいかな、と。
- リシャッフルとリシャッフルの間、10試合の残り5試合のうち4試合はメジャー大会。出場権獲得に向けてポイント獲得や予選会出場など必要な選手も多いですが、詳細は後ほど別途紹介して解説します。
- ◯印のリシャッフル影響下の大会は、第二回リシャッフル以降も、ほぼ全員が現状でも、言い方変えると最悪これから全試合予選落ちしたとしても、全員ほぼ全試合に出場できるでしょう。例外は現在CMEポイントゼロの岩井姉妹です。でも全く心配してません。とりあえずひとまず一つでも二つでも決勝ラウンドに進んでCMEポイントを稼いで、昨年吉田選手がいたCMEランク81位以下の優先順位カテゴリ14に滑り込めれば、自ずと全ての出場権は見えてくるでしょう。
- 10月に始まる秋のアジアンスイングでは、出場にCMEポイントの積み上げが必要なので流石にまだなんとも言えない選手がほとんどです。ちなみに昨シーズンの場合、CME200から300ポイントで一部または4試合全てに出場できていました。毎週のように上位フィニッシュしている古江選手、西郷選手や山下選手、優勝した竹田選手などはすでにCME200から300ポイント以上を獲得済みのため、現時点でもすでに出場可能フラグを立てられそうです。
ダウ選手権と岩井姉妹
6月終わり開催のダウ選手権について脱線させてください。
ご存知の通り、この試合はLPGAレギュラーツアー唯一のペア戦です。2人一組で戦います。CMEポイントも付与されます。昨年優勝したのはジーノ・ティティクンとイン・ルオニンのペアでした。勝みなみ選手と組んだ渋野選手がホールインワンを達成したシーンを覚えている方も多いでしょう。
このダウ選手権で、岩井ツインズのペアを見たいと思いませんか? 同じ組でのプレーはあっても、岩井姉妹が2人一組で戦うって日本でもあまり無かったかもしれません
この144名のフルフィールド大会は、基本的に出場優先順位上位72名がペアの相手を指名します。ツアー選手であれば優先順位関係なく指名できます。昨年は例えば、優先順位上位にいた稲見萌寧選手が、ランキング下位の吉田優利選手を指名しました。最終的に稲見さんは欠場して、代役として先ほど何度も名前が出たレティシア・ベックと組むことになったんですけど、ひょっとして吉田選手のファンはベックの名前に聞き覚えがあったかもしれませんね。それはともかく、その前の週に現地観戦した時に稲見さんの関係者の方にお聞きしたところによると、吉田選手側から稲見選手に「ペア相手として私なんてどうですかー」という直接のアプローチがあったそうです。そんなこと言われたら断れないですよね。なので優先順位上位じゃなくても大丈夫。あなたの積極性で指名される可能性は大いにあります。
それから、昨年優勝のティティクンとルオニンが典型的な例ですけど、「指名される側」も上位72名の選手だったりするわけですよ。他にも韓国ナンバーワンのコ・ジンヨンが畑岡奈紗選手を指名したり、フランスの第一人者セリーヌ・ブティエが笹生優花選手と組んだりしました。「指名する側」のプレーヤーが逆に「指名される側」になると、「指名する側」の選手はどんどんいなくなるわけです。例年欠場者が多いこともあって、結果的に相手を「指名する側」の72人目は出場優先順位173位の選手でした。先ほど言及した稲見選手の代役のベックが172位でしたから、優先順位下位でも十分に出られます。というわけで岩井姉妹ペア誕生と活躍を期待してます!
メジャー大会の出場資格と出場可否状況
メジャー大会について触れさせてください。
ひょっとして、おまけにするのは勿体無いぐらいの最重要テーマかもしれません。
5つのメジャー大会は、リシャッフルが影響する出場優先順位リストではなく、主に世界ランクや最新CMEランクから出場者が選ばれると言いました。
他にもどんな出場枠があり、それぞれの枠でどの選手が出場可能なのか、またどの選手が出場未確定なのか、簡単な表にまとめてみました。

スポット参戦の選手はあえて除いています。対象はLPGAツアー選手のみです。
縦の見出し列に5つのメジャー大会、横の見出し行に日本人選手が関係しそうな出場枠を抽出して記載しました。実際にはもっと多くの出場枠があります。
そしてそれぞれのメジャー大会の個々の出場枠にどの選手が該当しそうか、緑のセルに記載してます。もちろん複数カテゴリに該当する選手も多いですが、1選手1枠に限定しています。
まぁ最初で2列目のメジャー優勝者とかは説明省きます。
岩井明愛選手と渋野選手が、前年トップ10入りしたメジャー大会が複数あり、出場権を確実にしています。
前年のCMEランク上位者というカテゴリもあるにはあるんですが、80位のシェブロン除けば、30位や35位までとかで、本当にトップのトップだった選手しか該当しません。
もしご存知なかったとしたら注目して欲しいのが、LPGA優勝者枠です。半年で2度のLPGA優勝を果たしたばかりの竹田選手が該当するのはもちろんですが、稲見萌寧選手もシェブロン選手権と全米女子プロの出場権を持っているんですよ。この2大会は過去1年ではなく過去2年の優勝者まで遡るからですね。日本国内ツアーに専念して海外メジャーはスポット参戦で、とメディアに語っていた稲見選手ですが、果たして本当にスポット参戦するのか注目です。参考までにシェブロン選手権のエントリー期限4月15日、全米女子プロは6月10日です。
続く世界ランク上位者枠では、山下選手が出場権を多く確定させています。岩井姉妹も然りです。
最新CMEランク上位者枠にすでに何人か名前を入れましたけど、メジャー出場に必要な今季最新CMEポイントってそんなに高くないんですよね。昨シーズンの実績値をベースにすると、数十ポイントで出場権獲得可能です。2月のファウンダーズカップと3月のブルーベイで予選通過してある程度ポイントを稼いだ吉田選手と馬場選手の、シェブロン選手権と全米女子プロの出場権獲得は現時点でもう確定と言っていいでしょう。
予選会はオープン競技の2試合で実施されているようです。細かくいうと例えば全米女子プロも主催のPGAオブアメリカが開催する大会の上位者が出場できる出場枠もあるのですが、日本人選手にはほぼ無関係なので全米女子オープンと全英女子オープンのみ予選会ありとしています。
昨年は米国内での地区予選会を勝ち抜いた吉田選手が全米女子本戦出場を果たしましたね。一方で勝選手と馬場選手は地区予選会で涙を飲みました。まだLPGAツアー選手ではないですが今年は原英莉花選手が米国4月の地区予選会にエントリーしたとの話をエプソンツアー会場で聞きました。今年も世界ランク上位入りが厳しい場合は、予選会に再挑戦する選手も出てくるでしょう。もうエントリー上限に達した日本国内の予選会も例年通り盛り上がりそうですね。
全英女子オープンの予選会はこの中では昨年馬場咲希選手が挑戦しました。全てイギリス国内で行われるんですが、一次予選は通ったものの、最終予選は勝ち上がることができませんでした。エプソンツアー会場でお会いした選手関係者の方によると、お父さんが「私をセントアンドリュースに連れてって」と言うので挑戦させられた予選会だったようですから、今年はないでしょうね。
最後の列の未確定者は、今後のLPGA大会で優勝するか、世界ランクまたは最新CMEランクを上げるかして、出場権を勝ち取ってくれることでしょう。
直近のシェブロン選手権未確定の岩井千怜選手には、3月のフォード選手権やシェブロン前週のJMイーグルで予選通過してCMEランク枠で出場してもらいましょう。すると今季最初のメジャーに日本人ツアー選手13人全員が勢揃いすることになります
以上です
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本コラムはこの動画を書き起こしたものです